2008年の瑞々しい夏、彼女はビジネスの糸を手繰りながらカンボジアの首都、プノンペンへと足を踏み入れた。流れる言葉が異なる街角に、彼女の心は旅の喜びで軽く跳ねたのを覚えている。時間の経つのも忘れるほどのその忙しなさの中で、ふと訪れた一日の自由。彼女は決して見過ごすことのできない呼び水を感じ、アンコールワット期の古びたお寺へ向かうことにした。
お寺への道は整備されておらず、蓮の花が道の両脇を飾るかのように静かに豪華を競い、その中を彼女がゆっくりと進む姿は、いつしか時間の流れさえ忘れさせる幻想のようであった。車の窓からぼんやりと蓮の花を眺めているうちに、彼女はどこか遠くの思い出へと心を馳せた。
まるで胸に古びた鍵を差し込むような感覚。彼女の記憶は、慎重に開かれた扉の奥から、過ぎ去った別の生を静かに呼び醒ます。その過去、彼女は老人の皺を纏った男性であり、蓮の花の池のほとりで、もう一人の老人と会話を重ねていた。その相手は世界を驚嘆させる「釈迦」に他ならず、二人は過ぎ去った時々をたどりながら語り合っていたのだ。
かつて仏教の礎を築いていた時代、彼女は釈迦の弟子としての役割を果たしていた。そして、二人が再び出会うことのない最後の刻、釈迦は彼女に来世について語る。彼女が次に生まれる時代には、もはや釈迦はそこにはいないと。この事実に彼女の心は深い衝撃を受け、忍び寄る悲しみに呑まれる。
しかし、釈迦は彼女に願いを託す。「来世、あなたなら必ずできる。私の遺志を継ぎ、新たな時代を築いてほしい。」この約束は彼女の中に深く刻まれたが、今の彼女はその託された具体的な願いの内容を覚えてはいなかった。日本に帰国してからも、そのぼんやりとした使命感によって日々はもんもんと過ぎる。
数ヶ月後、彼女は悩みを抱えたまま、メンターであり「きみがよものがたり」の著者、橘則俊に相談した。その瞬間、橘氏は遠い時代の記憶を開示し、「ラーブラ」、釈迦の息子であったと明かす。そして、彼はチャネリングを通じて過去との懸け橋を築き、彼女が託された使命を解き明かしたのだ。
「釈迦はいう、過去は月のエネルギーによって形成された。しかし来世であなたが目覚める時代には、太陽のエネルギーが利用可能となる。それ故、月の時代を終え、太陽の力を人類の手に渡せ。さらに、魂がグレートセントラルサンへと戻るためのルートを作り出し、永遠の光の循環を成し遂げてほしい」と。
この無形のエネルギー、グレートセントラルサンは、太陽系を超えた存在であり、我々の魂の故郷である。そして彼女は、橘氏の助言のもと、山へと向かい、仲間たちと共に新たな神事を執り行う。
宜なる用意を整え、巨石の前で誓言を放とうと彼女は試みたが容易ではない。何度かの挫折を乗り越え、ようやく彼女は誓いの言葉を唱える。その瞬間、彼女の魂は肉体を離れ、光の道を往き、グレートセントラルサンへと辿り着く。光よりも身も心も満たされる快楽の中で、彼女はなおも肉体へ戻るための道を見つけ出し、釈迦との約束、すなわち「帰還ルート」との対峙を果たしたのである。
月のエネルギーを太陽へと転じるこの試みは、肉体の終焉と共に魂が再び肉体を求める転生の連鎖を終わらせることを意味していた。彼女が以前より特技としていた水晶へのエネルギーの注入を試みるが、グレートセントラルサンの力は受け入れられなかった。しかし、宇宙からの啓示が彼女に道を示す。フラーレンの空間にそのエネルギーを宿すことに成功し、彼女は水の分子をその力で変えることにより、地球上で使いやすいエネルギーの形成、光の循環装置の創造に至った。
これが彼女と釈迦との約束の実現、新たなる太陽の時代の幕開けであった。彼女の物語は、静かに、しかし確実に、光へと向かう旅路の一歩を示すものだった。
